今日も雨が降っている。
6月だから、梅雨だし仕方ないけどやっぱりこう毎日降られると嫌気がさしてくる。
そんな憂鬱な溜息を一つ吐くと、コナンは傘をさして学校の昇降口を後にした。
「新一!」
暫く歩いていると、この天気とは全く違って、その声によって一瞬晴れたかのような明るい空気に包まれる。
でも、それもほんの一時の時間だけ。
呼び止められて振り返った途端
「・・・げ・・・」
コナンは今まで通りのどんよりとした空気に包まれた。
「あーーー。また嫌な顔した〜。いい加減その反応やめてくれてもいいんじゃねえ?けっこう傷つくんだぜ?」
コナンのこの態度は毎度の事だが、ちょっとは普通に返事してくれてもいいのに、と快斗は少し淋しそうな表情をした。
その様子に流石に悪いと思ってコナンが謝ろうとした時
「折角滅多に会えない恋人に会いに来たって言うのにさ〜v」
そう言葉を続けた快斗に、コナンはくるりと背を向けてさっさと歩き出してしまった。
「あ・・・し、新一?」
慌てて呼び止めると、コナンは足を止めて少し振り返って、
「・・・ダレが恋人だって・・・?」
そう一言冷たく言い放って、また歩き出してしまった。
でも、少し下を向いて歩くその表情は、少し頬が赤くなっていて。
それを自分でも分かっていたからさしていた傘をぐっと自分の顔に近づけて必死になって隠そうとしていた。
「あ〜・・・怒らせちゃったかなぁ・・・」
そんなコナンの様子を知らない快斗は少しばかり反省をしつつも、すぐに後を追いかけた。
今日は大事な事を言うために、会いに来たんだから。
***
「なぁ、21日って・・・何か予定とか、ある・・・?」
結局コナンの機嫌を取るためにいろんな話題を振っているうちに言い出せなくて、探偵事務所の前まで来た時に
やっと切り出した。
「はぁ?21日?別に今のところ何もないけどな〜。第一平日だし・・・」
学校行くくらいじゃん?
そう言って不思議そうな顔をして、快斗の顔を覗き込む。
「・・・どした?何かあんのか?」
快斗の顔があまりにも神妙な表情をしているので、いささかびっくりして聞き返す。
「・・・え、っと・・・実は、俺の誕生日・・・なんだけど・・・。その・・・・・」
珍しくしどろもどろになって、はっきりと言えずにいる快斗を横目に、コナンは一つ軽く溜息をつくと、
「・・・・・一緒に祝って欲しい・・・だろ?」
そう言って快斗の顔を見上げた。
「・・・え・・・?」
なかなか言い出せずにいた快斗の代わりにコナンがその続きを口にしたのがよほど驚いたのか、目を見開いて
コナンを見つめた。
そんな様子にコナンはにやりと笑っていつもと変わらない様子で続ける。
「俺を誰だと思ってんだよ・・・これでも探偵だぜ?おめーの考えてる事くらい、少しはわかってるつもりだぜ?」
その言葉に快斗は途端に嬉しさが体中を走り回って、思わずさしていた傘を放り出してコナンに飛びついて抱きしめていた。
「・・・新一〜〜〜vvv」
「あ〜〜〜〜〜〜、もう、おめーの気持ちは分かったから!!!離れろ!」
「んで?俺にどう祝って欲しいんだよ?」
先程の一騒動でお互い雨に濡れてしまったため、ひとまず探偵事務所に入って部屋で頭を拭きながら
コナンは少しぶっきらぼうに聞いた。
「・・・ごめんってば・・・。嬉しくて、つい、さ・・・」
自分ならまだしも、コナンまで雨に濡れさせてしまった事を反省してたので力無く謝りの言葉を綴った。
そんな様子にコナンは少し微笑してしまう。
「・・・それはもういいってば。・・・それより、らしくねーよな。」
「・・・?」
「だっていつもだったら・・・KIDの時とかだったら平気で恥ずかしい事とか言うくせにさ・・・」
少しばかり気になっていた事をコナンはそれとなく口にする。
いつもはキザな台詞を事も無げに言うのに、こんな事でさっきみたいに言い出せない、なんてちょっと信じられなかった。
「そりゃ、KIDの時とは違うよ。半分は演じてるようなもんだから・・・新一だって『コナン』の時は違うでしょ。
それと一緒だよ」
確かに言われてみればそうだった。
自分も常に『コナン』という人物を演じているのだから・・・
「・・・んで、決まったのかよ?プレゼントくらい用意してやるよ」
今はまだ蘭が帰ってきていなかったから快斗を部屋にあげたけど、もう少しで帰ってきてしまう。
そしたら、自分そっくりな快斗を見たら、どう思うだろうか・・・そう思うと気が気ではなかった。
「おい・・・蘭が帰ってきちまうから、早くしろよ。」
なかなか決まらない様子にだんだんしびれを切らしてきたのか、悪気はないのについせかしてしまう。
「ご、ごめん・・・えと・・・あ、俺、新一と一日一緒に過ごせればいい!」
「へ・・・?」
あまりにも単純でプレゼントとは思えない発言に半ば呆れたようにききかえしてしまった。
「そんなんで・・・いいのかよ?」
「うん!俺、一緒にいれるだけで幸せだから。それだけで最高のプレゼントだよ!」
でも、その日は平日。お互い学校があるし、夜になればコナンは家に帰らなくてはならない。
そうなるとかなり時間が限られてしまっている。
快斗の『一日一緒に過ごしたい』と言う言葉をどうにか出来ないかと、コナンは考え込んでしまった。
でも当の本人はそこまで気にしていないみたいで、
「ほんの数時間だけでもいいからさ♪」
と嬉しそうに言って、約束の時間を何時にしようか、など一人で考え出していた。
本当は最初はそこまで祝うつもりはなかった。ちょっとプレゼントを用意してあげればいっか、なんて安易に考えていた。
でも、快斗の言葉がコナンの心に深く突き刺さった。
自分の誕生日を、こんな自分と一緒に過ごせればいいと、ただそれだけで幸せだと言ってくれている。
それだけ、自分の存在は快斗にとって必要とされているんだと、感じさせられてしまった。
だから、ただ一緒に過ごすだけではなくて少しでも快斗が喜ぶ方法がないか、頭を巡らせて考え込んでしまった。
「あれ?新一・・・?どうしたんだよ?」
そんなコナンの様子にやっと気付いたのか不思議そうな表情で声をかける。
(どーしたもこーしたも・・・てめーの事で頭悩ませてんだろうが・・・)
内心そう思いつつもそれを口にしてしまったら余計に快斗に気を遣わせてしまうのでついついコナンの時の
笑顔で対応してしまった。
「何でもないよ!」
「・・・・新一・・・明らかに怪しい・・・ま、いいや。えっと、じゃあ、当日は学校終わったら迎えに行ってもいか?
そしたらそっから適当にメシでも食いに行こうぜ!」
(は!?それだけかよ?そんなんでおめーは満足なのか???あ〜〜〜わかんねーなぁ・・・)
「な。新一?それで大丈夫だろ?」
その時「新一」と呼ばれている事に改めて気付いたコナンは、ふっと不敵な笑みを浮かべると快斗に向かって
何か覚悟を決めたように口を開いた。
「いや・・・待ち合わせは・・・俺の家だ。」
「へ!?」
コナンの思いがけない言葉に快斗はすっとんきょうな声を出してしまった。
「お前、メシくらい作れるんだろ?だったら俺の家で何か少し作ってくれればいいから。」
「・・・あ、あぁ・・・それはいいけど・・・?」
「じゃ、決まりだな。適当に夕方にでも来てくれればいいから。」
「・・・・うん・・・?」
(たまには、こんな事に使ってもいいよな・・・灰原?・・・これくらいは許してくれよな・・・)
***
「あ〜〜〜、折角俺の誕生日だって言うのに・・・新一と一緒に過ごせるのに、何で又雨なんだよ〜・・・」
そうぶつぶつと空に向かって文句を言いながらも、どこかご機嫌で今日の夕飯の買い物に向かう。
(えっと〜・・・新一は普段あんまり食べないからなるべく栄養があるものがいいかなぁ〜・・・
あ、でも蘭ちゃんが毎日ご飯作ってるから平気か)
一人心なしかうきうきしながら買い物を続けていると、ふと甘い香りに誘われてそちらの方へと行ってみると
ケーキ売り場と目が合ってしまった。
(・・・誕生日だし、新一も少しは食べるかな〜)
そんな事を考えながら一通り買いそろえると、荷物が濡れないように注意しながら傘をさして、
訪れるのは久々となる工藤邸へと歩き出した。
ピンポーン・・・
いつもは2階から侵入してこの家に入っていたので、実はきちんとチャイムを鳴らして家に入るのは初めてだったりする。
そんな事すら、何だか変に緊張してしまって、ドアが開いたら何て言おうか、なんてよく分からない事まで考えてしまっていた。
その時ーーーーー
ガチャ
ドアが開く音と共に扉が内側から開き、その先には自分と同じくらいの背丈の人物が自分を招き入れるために現れた。
「・・・・・・・・え・・・・・・・?」
「・・・いらっしゃい・・・」
微笑しながら、ちょっとだけ恥ずかしそうな表情をしながら、自分と同じ目線で、自分と同じ顔で、自分とそっくりな声で・・・
優しく迎え入れてくれている。
「・・・し・・・しん・・・い、ち・・・?」
「・・・うん。誕生日、おめでと・・・快斗・・・」
続きはさくらのssでどこかにある裏へ…。